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高畑勲監督の名作「セロ弾きのゴーシュ」

2024年08月05日(月)

 

 今は亡き高畑勲監督の実力が、少なくはないですがまだ一部のファンの間で知られていた頃の作品。「セロ弾きのゴーシュ」はオープロダクションという一下請けプロダクションが5年の歳月をかけて自主制作し、当時は幻の名画でした。83年2月に京都会館第2ホールで初公開しました。真冬の寒いなか、会場前は長蛇の列。2回上映しましたがともに満席でした。公開を待ちこがれた思いがあふれる上映会でした。

 原作を見事に生かしながらも、変えるところは大胆です。主人公のゴーシュを青年にしました。指揮者がゴーシュに向かって、「君には表情というものがまるでできてない」と指摘しますが、〈表情〉とはどんなものかを問い返す勇気もなく、しょげかえってしまい悔しい気持ちを飲み込んでしまいます。夜ごと登場する猫やカッコウに対しては思いっきり怒りの感情をチェロの演奏でぶつけ、タヌキとネズミの親子には楽しくそして優しく気持ちを込めて演奏します。内気で劣等感のかたまりのようなゴーシュが、知らず知らずのうちに自分と音楽の〈表情〉を獲得していきます。その姿が実に説得力豊かに描かれています。原作に出てくる第6交響曲を、ベートーベンの第6交響曲「田園」に見立て、オーケストラの演奏曲はもちろんのこと、BGMとしてもこの曲で統一しているところなど、映画の内容とマッチングしていて見事としか言いようがありません。   夏の仕事で野外上映の折にこの作品を薦め映写してきました。ちょっとした至福の時間です。